ニキビ治療のイソトレチノインの効果とは?

イソトレチノインはどんな薬?

  • イソトレチノイン
  • イソトレチノインは、ビタミンAをもとに開発された飲み薬です。

    正式には「13-cis レチノイン酸」と呼ばれ、皮脂腺の働きを抑えて皮脂分泌を減らし、炎症や毛穴づまりを改善します。

    1980年代にアメリカで登場して以来、現在では「ロアキュタン」や「イソトロイン」など複数の名前で世界中に流通しています。
    日本では保険適用外の薬ですが、難治性ニキビや繰り返すニキビに対して高い効果が期待されています。

    なお、妊娠中に服用すると胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中・授乳中の方には処方できません。
    女性は服用前後に一定期間の避妊が必須となるなど、厳格なルールのもとで取り扱われる薬です。

ニキビに劇的な効果を発揮

イソトレチノインは、従来の外用薬や抗生剤で改善しなかった重症ニキビにも有効です。
皮脂の分泌そのものを抑えるため、赤みや炎症を鎮めるだけでなく、再発のリスクも大幅に減らせる点が大きな特徴です。
治療を続けることで寛解(ニキビがほぼ出ない状態)に導くことができ、まさに切り札的な存在といえます。

世界中で使用されているニキビ治療薬

イソトレチノインは30年以上にわたり世界各国で使用され、米国のガイドラインでも難治性ニキビに対する第一選択薬とされています。
欧米では保険適用で広く処方され、日本でも美容皮膚科を中心に取り入れられています。
ただし、副作用や催奇形性といったリスクがあるため、必ず医師の指導のもとで安全に使用することが大切です。

イソトレチノインの主な効果・メカニズム

ビタミンA誘導体の経口薬として難治性ニキビに大きな効果を発揮するイソトレチノイン。
皮脂腺の働きを抑えるだけでなく、炎症の抑制や角化異常の改善にも作用するため、再発しにくい肌環境へ導くのが特徴です。ここでは、その主な作用について解説します。

皮脂抑制・皮脂腺の縮小

イソトレチノインの作用

イソトレチノインは皮脂腺を小さくし、皮脂の分泌量を大幅に減らします。
皮脂が減ることでアクネ菌が繁殖しにくい状態となり、新たなニキビの発生を防ぐことができます。
一方で、皮脂の抑制により乾燥を感じやすくなるため、服用中は保湿ケアが欠かせません。

抗炎症・抗酸化作用

皮脂が酸化すると肌にダメージを与え、炎症や赤みの原因になります。
イソトレチノインには抗酸化作用があり、皮脂の酸化を防ぐことで炎症を抑え、ニキビの悪化を防止します。
また、免疫反応を穏やかにすることで、赤みや腫れを和らげ、ニキビ跡が残りにくい肌環境を整えます。

皮膚のターンオーバーの促進

通常、肌の細胞は約1か月周期で生まれ変わります。
イソトレチノインはこのターンオーバーを促進し、毛穴の詰まりを起こす角化異常を改善します。
治療初期には一時的に皮むけやニキビの悪化が見られることもありますが、次第に皮膚が順応し、既存のニキビが減少し新しいニキビができにくい肌へと変化していきます。

イソトレチノインの効果実感タイミング

イソトレチノインは即効性のある薬ではなく、効果を実感できるまでには時間がかかります。

一般的には4~6か月の内服を1クールとしています。
早い方だと1か月ほどで改善が見込めますが、再発リスクを抑えるため、6か月程度は服用を継続していただくことが多いです。
効果の出方には個人差があるため、治療の進み方は人それぞれ異なります。

ここからは、服用開始からの経過を段階ごとに解説していきます。

服用期間

イソトレチノインの基本的な治療期間は16~24週(約4〜6か月)を1クールとします。
重症度や体重によっては1年ほどかかる場合もありますが、多くはこの期間で大きな改善が期待できます。

再発を防ぐためにも、医師の指導のもとで規定期間をきちんと継続することが大切です。

服用から1〜2週間

内服を始めて1週間ほどで皮脂分泌が抑制され、乾燥や皮むけといった副作用が現れやすくなります。
この時期はターンオーバーが活発になるため、かえってニキビが増えたように見える「好転反応」が起こることもあります。

服用から3〜4週間

3〜4週間目になると乾燥が目立つようになり、特に唇の皮むけや肌のつっぱりを感じやすくなります。
これは薬がしっかり効き始めているサインですので、保湿ケアを心がけながら治療を続けることが大切です。

服用から4週間〜

1か月を過ぎると、皮膚が薬に順応しはじめ、既存のニキビが落ち着き新しいニキビができにくくなります。
効果を実感できる方が増えてくるのもこの時期です。

服用から8週間〜

2か月を過ぎる頃には治療が安定期に入り、炎症が落ち着いて新しいニキビが出にくくなる方が増えてきます。
症状の改善具合によっては、医師の判断で服用量を調整する場合もあります。

再開の目安

治療を終えると、多くの方は「ニキビができにくい肌質」へと変化しますが、約3割の方には再発がみられます。
再開する場合は、前回の服用終了から2か月以上あけることが目安です。
2クール目や3クール目を行うことで、より効果が定着しやすくなるケースもあります。

イソトレチノインの
服用方法

イソトレチノインは強い効果を持つ薬のため、必ず医師の指導のもとで服用する必要があります。
服用量や期間は症状や体質によって異なりますが、ここでは基本的な服用方法をご紹介します。

累積用量が重要

イソトレチノイン治療では、治療中に服用した総量(累積投与量)が効果と再発率に大きく関わります。

累積用量とは、治療期間全体で体重1kgあたりに摂取するイソトレチノインの総量を指し、再発防止のための重要な指標とされています。
一般的には 体重1kgあたり120〜150mg が目標とされ、特に120mg/kg以上を達成すると再発率が有意に低下することが報告されています。

たとえば、体重60kgの方で目標を125mg/kgとした場合、60kg × 125mg = 7,500mg が治療全体で必要な総量の目安です。

治療期間の計算例(体重60kgの場合)

  • 1日20mgを服用 → 7,500mg ÷ 20mg = 約375日(12か月半)
  • 1日40mgを服用 → 7,500mg ÷ 40mg = 約188日(6か月強)

このように、1日の服用量によって治療期間は変わりますが、最終的に目標累積量を達成できれば治療効果に差は少ないと考えられています。

ただし、220mg/kgを超えるような過剰な投与は、副作用リスクが増えるだけで追加的な効果は認められないとされており推奨されません。
そのため当院では「容量が多ければ多いほど良い」という考え方は取らず、新しいニキビがほとんど出なくなった状態を目安に、安全性とのバランスを重視した治療を行っています。

医師の指示に従い服用

イソトレチノインは効果が高い一方で、副作用やリスクも大きいため、医師の指示に従って服用することが極めて重要です。

  • 服用量は一律ではない
  • 食後服用の徹底が必要
  • 重大な副作用リスク

これらの理由から、イソトレチノイン治療は必ず専門医の管理下で行うべきです。
医師は症状の経過や副作用の有無を確認しながら、最適な用量や治療期間を調整します。
自己判断で服用を増減すると、効果が得られないだけでなく、副作用が重くなる危険性もあります。
特に胎児への催奇形性があるため、妊娠中や妊娠の可能性がある方は服用できません。
避妊期間や治療の中止時期も、必ず医師の指導に従う必要があります。

イソトレチノイン服用中の注意点

イソトレチノインは高い効果が期待できる一方で、副作用や肌の変化が起こりやすいため、服用中はいくつかの注意が必要です。

定期的な血液検査

  • 定期的な血液検査
  • イソトレチノインは肝機能や血中脂質に影響を与える可能性があるため、定期的な血液検査によるモニタリングが欠かせません。

    治療前に基準値を確認し、服用開始後は1か月後・3か月後を目安に検査を行うことで、安全性を確保します。
    血液検査では、肝機能(AST・ALT)、筋肉への影響を示すCK、血算、脂質(TC・HDL・LDL・TG) などを確認します。

    まれに数値の変動が見られることがあり、検査結果に応じて医師が投与量を調整します。
    このように段階的に状態をチェックすることで、副作用を最小限に抑えつつ、安心して治療を続けることが可能になります。

体調に異変があれば医師に相談

  • 体調に異変があれば医師に相談
  • 服用中に乾燥や倦怠感、吐き気などの体調変化が見られた場合は、自己判断せず必ず医師に相談してください。

    症状に応じて内服量の調整や一時的な中止、追加の血液検査などを行い、安全に治療を続けられるようサポートいたします。
    不安があれば、通院予定を早める・相談だけの受診も可能です。

保湿や紫外線対策

  • 保湿や紫外線対策
  • 服用中は皮膚のターンオーバーが促進され、乾燥や肌荒れが強く出やすい状態になります。
    特に唇の乾燥や皮むけは多くの方が悩まれる症状です。
    保湿ケアを徹底し、外出時は紫外線対策も欠かさないようにしましょう。

    乾燥や紫外線によるダメージを防ぐことで、副作用の負担を和らげつつ治療を続けることができます。

他施術の併用

  • 他施術の併用
  • イソトレチノインを服用中は皮膚が敏感になっているため、施術による炎症やダメージが強く出やすくなります。
    治療を希望する際は、必ず医師にご相談ください。

イソトレチノイン
服用後の注意点

イソトレチノインは治療を終えたあとも体内に影響が残るため、服用終了後にも注意すべき点があります。
安全に次の治療へ進むため、また副作用リスクを避けるために、以下のポイントを守ることが大切です。

次の服用まで最低でも2ヶ月空ける

イソトレチノインを再開する場合は、前回の服用終了から最低でも2か月以上の間隔をあける必要があります。
これは体内に残っている薬の影響を取り除き、副作用やリスクを減らすためです。
十分な間隔を設けることで、2クール目以降の治療効果も安定しやすくなります。

服用後でも避妊が必要

イソトレチノインには強い催奇形性があるため、服用をやめた後も一定期間は妊娠を避ける必要があります。

女性:服用終了後 6か月間は必ず避妊が必要
男性:服用終了後 1か月間は避妊が必要

服用後もしばらくは体に薬の影響が残るため、医師の指示に従い、確実な避妊を続けることが重要です。

イソトレチノインの
症例写真

施術前
施術前
施術後
施術後
お悩み 炎症ニキビ+化膿ニキビ+ニキビ跡
性別・
年代
20代男性
施術名 イソトレチノイン 6ヶ月服用
ケミカルピーリング 15回
光線治療 10回
ACデュアル 10回
費用目安 ¥319,000〜

※施術内容や価格等は該当施術を行った時点の情報となります。

リスク・副作用

【イソトレチノイン】
粘膜の乾燥症状(唇・鼻の乾燥、ドライアイなど)鼻血や頭痛が見られる場合があります。
【ケミカルピーリング】
発赤、熱感、ひりつき、乾燥、かさつきが生じます。また、稀に表皮剥離・色素沈着、瘡蓋が生じることがあります。
【光線治療】
発赤、熱感、ひりつき、乾燥が生じます。また、色素部が一時的に濃く浮き出たり、瘡蓋になる場合があります。
【ACデュアル】
発赤、熱感、ひりつき、乾燥が生じます。また、ごくまれに瘡蓋になる場合があります。

イソトレチノインのリスク・副作用

イソトレチノインは高い治療効果がある一方で、副作用や服用上の注意点が多いため、必ず医師の管理下で安全に使用する必要があります。

妊娠に関する重大なリスク(催奇形性)

女性:服用開始の1か月前から避妊が必要。服用中および終了後6か月間も避妊を継続。
男性:服用中および終了後1か月間は、パートナーを妊娠させないよう避妊が必要。
授乳中:母乳を通じて乳児に影響を与える可能性があるため処方不可。

万が一、服用中に妊娠が発覚した場合は、ただちに服用を中止し、速やかに医師へ相談してください。

主な副作用

イソトレチノインの副作用は用量依存性であり、服用量が多いほど症状が強く出やすくなります。代表的な副作用は以下のとおりです。

  • 唇や肌の強い乾燥・皮むけ
  • 鼻血、ドライアイ、目のかすみ
  • 関節や筋肉の痛み
  • 頭痛、倦怠感、吐き気
  • 抜け毛、ふけ
  • まれに気分の落ち込みやうつ症状など精神面への影響

内服できない方

以下に該当する方は、イソトレチノインを服用できません。

  • 妊娠中、授乳中の方
  • 成長期(15歳未満)の未成年
  • 精神疾患をお持ちの方
  • 肝障害・高脂血症がある方
  • 特定の抗生剤やビタミンA製剤を使用中の方

※18歳未満の場合は、保護者の同席が必要です。

注意事項

  • 献血の禁止
  • 紫外線対策
  • 自己判断で中止しない
  • 個人輸入の禁止
  • 医師の管理下での服用

イソトレチノインを安全に使用するには、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。

服用中および終了後6か月間は献血できず、妊婦に輸血された場合は胎児へ深刻な影響を及ぼす恐れがあります。
さらに、紫外線に対して肌が敏感になるため、外出時には日焼け止めや帽子などで予防することが欠かせません。
効果が出始めても自己判断で中止すると再発リスクが高くなるため、必ず医師の指示に従うようにしましょう。

加えて、個人輸入は法律で禁止されているため、処方は必ず医療機関を通じて受けることが求められます。
副作用の確認や安全管理のためにも、定期的な検査を行いながら医師の管理下で継続することが望ましいです。

ニキビ以外の
悩みへの効果

イソトレチノインは、重度のニキビ治療薬として知られていますが、それ以外の肌トラブルにも有効性が報告されています。
ここでは代表的な「ニキビ跡の炎症」「酒さ」「毛穴の開き」について解説します。

ニキビ跡の炎症への効果

  • ニキビ跡の炎症への効果
  • イソトレチノインは、過剰な皮脂分泌を抑え、毛穴の詰まりや炎症を防ぐことで、新しいニキビの発生を抑制します。
    これにより炎症後の赤みや色素沈着を残しにくくし、将来的なニキビ跡の予防につながります。
    既にできてしまったニキビ跡を直接改善することはできませんが、今あるニキビを治療することで、跡が残りにくい肌質を目指すことが可能です。

酒さへの効果

  • 酒さへの効果
  • 酒さ(赤ら顔)に対しても、イソトレチノインは有効とされます。
    皮脂腺の縮小や抗炎症作用により、頬や鼻にできる丘疹・膿疱の改善、さらには慢性的な炎症で生じる「鼻瘤(びりゅう)」の進行抑制が期待できます。
    特に、低用量のイソトレチノイン療法で症状が大きく改善したという報告も多く、抗生剤や外用薬で効果が得られなかった酒さに対する治療として注目されています。

毛穴の開きへの効果

  • 毛穴の開きへの効果
  • 毛穴の開きの原因の一つは皮脂の過剰分泌です。
    イソトレチノインは皮脂腺を退縮させ、皮脂量を減らすことで、開いた毛穴を引き締める効果が期待できます。
    さらに、ターンオーバーを正常化する作用によって角栓ができにくくなり、毛穴の黒ずみ改善にもつながります。

安全な治療のために

必ず医師の管理のもとで治療を受ける

イソトレチノインは強力な効果がある反面、副作用やリスクも大きいため、必ず医師の管理下での治療が必要です。
血液検査によるモニタリングや副作用のチェックを行いながら、適切な用量や期間を調整していきます。

自己判断による用量や回数の変更はダメ

「効果を早く出したいから増量する」
「副作用が気になるから減量する」
といった自己判断での服用量や回数の変更は危険です。
効果が得られないばかりか、副作用が強く出たり、再発リスクが高まったりする可能性があります。
必ず医師の指示に従ってください。

途中の服用中止も医師へ相談

症状が改善してきても、累積用量に達する前に自己判断で中止するのは避けましょう。
治療効果が不十分となり、再発しやすくなるリスクがあります。
副作用や体調変化などで服用継続が難しいと感じた場合も、必ず医師に相談して適切な対応を受けることが大切です。

総院長北山医師

記事監修
総院長 北山 英美子

【経歴】
 平成11年3月 東邦大学医学部卒業
 平成11年5月 東邦大学形成外科 入局
 平成11年5月 日本形成外科学会 所属
 平成15年5月 日本美容外科学会 所属
 平成15年5月 渋谷フェミークリニック 院長就任
 平成16年11月 日本皮膚科学会 所属
 平成18年2月 フェミークリニック 総院長就任
 現在に至る

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